MENU

【感想】ソラニン新装版

青春の日々の思い出とともに

新装版、発売

先日、ソラニンの新装版が発売となりました。2010年には映画化もしている本作品、今更語るまでもないような気もしますけれど。今回の新装版は、前後編に分かれていたものが1冊にまとまり、新規描き下ろしも含まれています。

※感想のためネタバレ?注意

10年という時間

東京の大学を卒業した後、そのまま東京で働く芽衣子。同棲しているフリーターのバンドマン、種田。彼女たちが過ごすありふれた毎日。そして起こる突然の出来事と、芽衣子の決意。物語については、改めて説明するのは避けておきます。読んでないならまずは読みましょう。

さて、振り返ってみれば、自分が本作を読んだのは確か映画化よりも前でしたから、おそらく2008年頃だったでしょうか。すでにその頃「ソラニン」は話題になっていて、当時一緒にバンドをやっていた友達から勧められたような覚えがあります。気がつけばそれはもう10年前。

……10年。作中、芽衣子たち登場人物たちは大学へ入学した6年前のことを懐かしんでいましたが、それよりも長い時間が過ぎているのだなぁと思うとなんだか不思議に思えます。物語中で時折挟まる過去の話は、どこか読者にも昔を思い出させるような引き込む力があり、読んでいると非常にもやもやとした感情が生じてきます。

芽衣子の進む道

話が若干逸れましたが、本作ではいくつかの独白があり、それらは登場人物の思いであるとともに、読者への問いかけであるように感じられます。若い頃に漠然と感じていた、将来への不安。なんとなく幸せな日々はなんとなく続いていき、代わり映えのない生活を送りながらなんとなく生きている自分の存在。

だけど、きっとそんなことは誰しもが感じるような、それ自身も平凡なことなのでしょう。そんなことを度々にでも思うことがあるような人にこそ、この漫画は響くのでは。

 

もう戻れない日々、ありふれた平凡な生活だけど楽しかった日々。どんなに願っても戻れることはありませんし、それからの自分も捨てたものじゃない。新装版で描き下ろしとなった第29話では、一歩踏み出しだ芽衣子のそれから、10年以上経過した姿が描かれます。彼女もまた、時折その日々とその言葉に耳を傾けながらも、「ソラニン」の歌詞の通り、戻らずに前へと進んでいました。

10年。前述しましたが、自分にとっても10年という年月の長さは十分に感じます。芽衣子や周りの人々にしても、この10年間はただただ過ぎ去ったものではなかったと思います。それでもあの日々があったからこそ今の自分がいて、振り返ることはあっても立ち止まらずに前へ進むことができるのでは。

 

種田という人間が消えてしまっても時間は流れ、10年という日々はもう戻れないほどに遠く彼方へ。残された彼女たちは、かつて種田が望んでいなかったように、平凡でだらっとした幸せに包まれた退屈な毎日を過ごしています。

そんな彼女たちを見たら、あの日の種田は笑うのでしょうか。もし彼が生きていたら、彼もまた同じような日々を過ごしているのでしょうか。

それでも、その日々は自分自身が前へ進んできた、自分自身の道の結果。もしかしたら種田も、そんなことを思えていたのかもしれません。

それでも世界は変わらずに進む 

なんとなく賛否両論分かれそうな第29話ですが、個人的には芽衣子の成長、そして「自分にとって人生が変わるような出来事でも、世界は何も変わらずに日々は過ぎていき、その中で生きる人々の中でいつしか薄れていく」という(個人的に思っている)作品内のテーマを改めて感じることができました。

都合のいい奇跡みたいなことなんて起きるはずもないけれど、努力していれば相応の幸せは手に入る。若いころはそんな退屈な日々を送る大人を馬鹿にしていたけど、いざ自分が大人になってみればどうということもない。それが現代で生きていくことであり、登場人物たちが10年間で過ごしてきた日々なのでしょう。

 

また、作者あとがきでは、人間ひとりが死んでしまっても結局世界には何にも影響がなくて、10年という年月が経過すれば薄れていってしまうものなんだ、という、前述の個人的テーマのことも触れられています。

それでも、誰かに何かを残せていたのなら、その人が生きた意味はあったのではないでしょうか。例えば、時折にでも思い出されるようなメロディと言葉を残せたなら。それならば、彼が存在していた意味は、あの日々の意味はあったのではないでしょうか。

まとめ

なんだか感想というよりも、ぐしゃっとした思いを書き起こしただけになってしまいました。全然物語の内容に触れてませんね。過去をよく振り返るタイプの人間には響くものが多すぎて、とても上手く文章にできませんのです。

ソラニン」や「秒速5センチメートル」とかはどうも、見終わった後の引きずられる時間が長くて。それだけ物語に引き込まれて(自己投影して)いる、ということなのでしょう。

この漫画が一番心に残るのは20代後半~30代あたりの人だと思いますが、それ以外の年代の人でも興味を持ったらぜひこの機会に読んでもらえればと思います。

ソラニン 新装版 (ビッグコミックススペシャル)
by カエレバ