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【感想】池上遼一版スパイダーマン(1)

アメコミヒーロー、来日

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池上遼一スパイダーマン(1)

新年からマニアックな記事

漫画紹介コーナーの特別編として、この「漫画版スパイダーマン」を何度かに分けてご紹介。なんで新年からこんなマニアックな記事を、というのは止めてください。本人が一番分かっていません

さて、作者は劇画漫画でおなじみ、池上遼一氏。池上氏の描くスパイダーマン、というだけで興味を持たれる方も多いのではないでしょうか。

連載は結構古く、1970年とのこと。もう半世紀近くも前の作品になるのです。

実は一部で有名なこの作品、感想記事を書いている方もたまにいるようですね。

舞台は日本、テーマは同じ

この時代のローカライズらしくと言いますか、この漫画版スパイダーマンの舞台は日本に変更されています。主人公もそれに合わせ、ピーター・パーカーから「小森ユウ」という高校生の少年へ。

しかし、スパイダーマンの根本的な部分はしっかりと受け継がれています。

例えば、特殊なクモに噛まれたことで超人的な能力を授かるだとか、その強すぎる力の使い方に苦悩するだとか、高校生らしい恋愛や友人関係だとか。

原作のピーター・パーカーが直面していた多くの問題を、こちらの小森ユウも同じように抱えていくことになります。

この完全的な勧善懲悪ではない「大いなる力の拠り所」や「青春劇」がスパイダーマンの魅力であり、原作のその魅力を上手く日本版へと変換しているのが本作です。

巡る展開の速さ

この時代の漫画のスピーディーさは、現代漫画とは大きく変化した点かと思います。現代漫画と比較すると、物語の展開が速いんですよね。

例えば冒頭、スパイダーマンの導入では定番のシーン。

  1. 主人公・小森ユウが高校で実験を行っている最中にクモに噛まれ、
  2. 体調の変化を感じ、
  3. 超人的な能力を発現して、
  4. その力の使い方を習得し、
  5. クモの巣を発射する機械やコスチュームを作成し、
  6. スパイダーマンとなる

というくだりがわずか十数ページ程度で収まっております。

手塚治虫の作品などを読んでも、展開のあっさりした進行に驚きますものね。現代と比べてどちらが良いか、ということではありませんけど。

恐怖の化学室

それにしてもこの冒頭シーン、小森は高校の化学室で夜遅くまで実験を行っているのですけど、それを咎めにきた先生は小森に対して「放射能制御装置の実験ほど危険なものはない」という発言をしています。

……小森が扱っているのは「放射能制御装置」なのか!?

一般の生徒が、しかもひとりで「放射能制御装置」を扱える高校とは、なんと物騒な。

さらに、小森は自身が超能力を習得した原因を「実験で出た放射能を大量に吸収したクモに噛まれたため」と分析しています。

……その装置、放射能放射線?)ダダ漏れじゃないのか!?

放射線ガバガバな装置を、放課後に生徒がひとりで取扱うことができるとは、さすがにまずいのではないでしょうか。チェルノブイリに先立つ大惨事を引き起こしかねないこの事実、この高校の行く末が気になって仕方ありません。

というか、こんな状況ではこの高校から第二、第三のスパイダーマンが登場しても不思議じゃないのでは。

ヴィラン(悪役)も日本人へ

スパイダーマンといえば有名なヴィランが多く存在します。ヴェノムをはじめ、映画で登場したグリーンゴブリンやドクター・オクトパス、あるいはサンドマンやエレクトロ、リザードマンなど。

漫画版でも何人かは登場しており、しっかり日本版へと設定変更されています。

エレクトロ

スパイダーマン最初の敵として登場するエレクトロ。映画(アメイジング2)でも登場しましたね。

その正体は、小森のペンフレンド(もはや死語?)の女の子、ルミの兄。ルミは行方不明となった兄を追って上京し、スパイダーマンとしての力に目覚めた小森とともに兄を捜索します。

しかしその頃、兄は不慮の事故から多額の借金を背負い、その代償として人体実験を受け、電気人間のエレクトロと化していました。

その力を悪用して銀行強盗などを繰り返していましたが、止めに入ったスパイダーマンとの戦闘中、誤って人体実験を行った博士を殺害。二度と人間に戻れなくなったエレクトロは、絶望のままスパイダーマンに倒されたのでした。

そして、図らずともルミの兄を殺害してしまった小森は、この超能力は本当に自分の為となるものなのか苦悩することに。

この「強大な力」に対する葛藤は、やはりスパイダーマンという作品にとって最大のテーマなのでしょう。漫画版でも幾度となく出てくるこのテーマ、上手い具合に昭和の日本へと適合させていると思います。

リザード

トカゲ男とも呼ばれる、巨大な爬虫類生命体。「アメイジング1」でのヴィランでしたね。温厚な博士が冷徹なリザードへと変化するそのギャップが恐ろしいヴィランです。

漫画版でも、序盤の敵役として登場します。その正体は、ある製薬会社の社長に裏切られてジャングルの奥地へ置き去りにされた科学者、犬丸博士。

ジャングルで襲い来る巨大なトカゲを命懸けで撃退しているうちにゾアントロピー(獣化現象)が発生し、彼自身も巨大なトカゲへと姿を変え……。

ちょっと待て。

放射線を浴びたクモに噛まれたスパイダーマン」や「高電圧放射工学の専門家に帯電装置を埋め込まれたエレクトロ」のような、フィクション的な理由付けならまだ分かりますよ。

仮面ライダーだってショッカーに改造されてますし、ウルトラマンだって宇宙人と合体した結果ですし。

でも「襲い来るトカゲへの恐怖心からトカゲの物真似をしていたらトカゲになっていた」ていうのはちょっと無理があるんじゃないでしょうか、犬丸博士よ。夢ムドーと化した王様だってもうちょっと前フリはありましたよ。

……まあ、この犬丸博士に文句を言っていてはキリがないくらい、この後の敵役もツッコミどころは満載なんですけど。

まとめ

さて、気になる点もいくつかありましたが、スパイダーマン作品の共通したテーマである(と考えている)「巨大な力への葛藤」と「青春劇」が上手く昭和の日本へとローカライズされている名作だと思います。

他の話についても、いずれまた語る機会があれば。

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by カエレバ